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2016.12.26
弘前市と湯沢市

建築学会の作品審査で、弘前市にある前川國男設計の弘前市民ホールを視察した。弘前市は、前川建築が多数残っていることから、市民が要望して、市に保存を呼びかけ、市も応えて、改修保全を行っている。今回は、機能的全面改修とデザインは設計当初の状態に戻すため、前川事務所に依頼、大規模改修を行ったものである。市担当者いわく、あと50年は使いたい。空調関係は全面改修、バリアフリー化をはかるため、目立たない場所にエレベーターを設置、トイレ改修、デザインは建設当初に戻すため、家具、色彩、建具、手すり、緞帳等を全面的に取り替えたり、補修している。完成した姿は、エレベーターはもとからあったように見え、すべてが、なじんでいる。ものすごい労力を掛けた結果であろう。最近では、前川建築ツアー等も行われ、市民の意気込みが感じられる。秋田県湯沢市に現存する白井建築群。今、旧雄勝町庁舎は、7千万円も掛けて解体されようとしている。公共工事として解体し、駐車場にするためとか。前川事務所の橋本所長と話をした。市民がどのような意識を持つかが大切。建築家がいくら騒いでも無理とのこと。民度の差ということになるのだろうか。寂しい限りである。 茂木聡