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2017.11.29
福祉施設に思うこと

日本における福祉施設は、歴史から来る暗いイメージが付きまといます。先日wowowで見た「92歳ののパリジェンヌ」は、日本とヨーロッパの意識の違いをまざまざと感じさせられました。映画は、年老いた老女がひとりで生活しています。定期的にヘルパーに援助してもらい、子供たちとも時々あいながら。しかし、自分で今まで一人でできたことが、できなくなってくる。そして尊厳死を考えるというストーリーです。日本では、この状態までひとりで暮らすことは、めったにありません。私が知っている老人施設に入居されているかたがたは、もっと元気な方が多くいらっしゃいます。北欧では、ギリギリまでヘルパーの援助で一人で暮らし、それができなくなると施設に入るのが一般的なようです。しかし、故外山義京大教授は、スウェーデンで研究を続け、施設に入所したとたん、人間的尊厳が失われていくことを論文で発表されています。その経緯は「クリッパンの老人たち」で日本でも発表されています。お年寄りの施設への入所と一人暮らし。日本の福祉制度では難しい面もあります。家族制度の考え方の違いもあります。しかし、そろそろ本腰を入れて考えなければいけない時代になってきていると考えます。福祉の問題は、国や行政の問題ではありません。我々自身の問題です。考える機会、話し合う機会がなかなか無いのが現状ですが、その機会を作っていくことも我々に課せられた使命と思います。  茂木 聡