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 コラム

2020.12.1

2020年も12月を迎えました。今年は今まで経験したことのない一年でした。コロナに始まって、まだ終息していない。最近はますます陽性者が増えている状況です。未知の感染症として流行し、気が付けば世界中に感染拡大していました。幸い、身近な方が感染した例はありませんが、生活の自由は大幅に制限されました。仕事では、打ち合わせの自由度が制限されました。原則WEB会議。しかし、行政手続きは、「face to face + 印」と何ら変わりありません。必要のないシステムは早く改善されることを望みます。先日、現在設計中の建築の住民説明会が行われました。おおよそ60余名の方が参加、様々な意見が出ました。感染拡大地域でしたので、住民説明会が感染症クラスターの原因になることは避けたいとの思い、住民の方々の熱い思い、それぞれのギャップに建築設計というものの難しさをあらためて痛感しました。幸い秋田県は、今のところ感染者は少ない状況です。しかし、この数字が本当の数字なのかは、検査数の問題等で疑問もあります。たしかに関東からの交通の便はあまりよくありません。新幹線は盛岡-秋田間は従来の特急列車並みの速度で時間がかかります。飛行機も一日7往復飛んでいましたが、減便されています。これらが吉となっているのかもしれません。しかし、人の往来が少ないということは、人口減少の激しい県にとって、企業等には致命的です。今後ますます秋田県を離れる会社が増えることも予想されます。コロナ感染症は、時間の問題で解決する内容です。星野リゾート社長の発言でも、ワクチン等の薬が開発されれば解決する問題、先が見えている困難は怖くないという趣旨のコメントを出されています。我々にとっては、コロナ禍その後が大問題になると考えています。国や地方自治体は相当額の資金をコロナ対策のために出しています。財政破綻しないためにも、コロナ後は、緊縮財政、税額アップが避けられないでしょう。その時点でどのくらい企業に体力があるか問われることになるでしょう。弊社にしても、営業活動は積極的には行えません。来年以降、生き残りをかけて努力するしかないのだと、考えています。  茂木聡

2020.11.7

新型コロナウイルス感染症が今年の前半(3月頃)から日本国内でも流行が始まり、非常事態宣言が発令され、第一波は終息したかに見えましたが、すぐに第二波が前回以上の流行を見せました。現在は少し落ち着いた時期かもしれません。東京の陽性者数に一喜一憂しています。しかし、北海道では連日100人を超える陽性者が確認され、日本全体としては増える傾向にあるようです。日本の気候はこれから冬。インフルエンザが流行する季節です。今回の感染症が同様の性質だとすれば、これから第三波が来ることも考えられます。様々な研究ががなされていますが、通常ワクチンが開発されるのは、2~3年。ワクチンの完成は来年以降でしょう。そのような状況の中、日本経済は大きなダメージを受けました。一時期トイレットペーパーやマスクが無くなるなど、オイルショック時を思い出します。政府は大型財政出動で何とか経済の崩壊を防ごうとしていますが、その後遺症は数十年も続くことになるでしょう。建築設計の仕事は、経済の最初の動きとおおよそ連動します。つまり経済効果が一般的に見えやすいのが建設業、その最初が設計活動という順番になります。確かに各行政庁に行くと、様々な建設計画が進みだしています。しかし、地方においては、人口減少のスピードが速く、建築活動の目的も、人口縮小に向けての活動とになります。具体的には、学校の統廃合などです。これは劇薬と同じで、一時期は活性化しますが、そのあとは、急激に落ち込むことになります。ダーウィンが「強いものが生き残るのではなく、変化できるものが生き残る」と言っています。建築設計業務は、半世紀近く変わっていません。既得権益つまり法律に守られて業が成立しています。手書きがcadに変わった程度で、目先の小さな変化しかないと思えます。大きく変わらないと、生き残ることは困難でしょう。弊社はZEBプランナーとしてCO2削減を一つの目標に掲げました。ZEBは今まで建築の意匠、設備分業に、変化を与えました。一体とした設計活動が必要になってきます。日本企業では、トヨタが絶えず変化を重ねています。我々も10年、20年先を見据えた会社運営を考えなければと痛感しています。  茂木聡

2020.9.24

感染症が流行するたびに、老人福祉施設は面会禁止の処置を行います。これは、外部からの感染を防ぐ手段として、有効です。しかし、終の棲家を標榜し、看取りを行う施設にとって、果たして正しい姿なのか、疑問を持ちます。昨今では、WEB面会や窓越し面会等が行われていますが、人間本来の五感での交流は多くを阻害されてしまいます。実際自宅での見取りが増えています。家族に見守られながら、人生の最後を迎えることは、ごく自然ことと考えます。どのようにすれば良いのか、今現在、答えは持ち合わせていません。しかし、今の現状が長引くのであれば、見取りは、家庭に返すことや、施設の一部を開放し、家族が頻繁に会えることも考える時が来ているように感じます。自分が愛する対象が、最後を迎えようとしている時、また最期を迎えようとしている立場を考えると、施設側は、歩みだす必要が来ていると思います。このことを考えなければ、施設の存在は意味がないものになっていくでしょう。北欧では、かなり前から施設解体が進み、在宅ケアに移行しました。終末期は施設に入ることもありますが、日本のように介護度3から入所することはありません。安全という言葉は、施設運営者側の元気な人間にとっての免罪符のようにさえ思えてしまいます。 茂木聡

2020.9.3

ZEBは、CO2削減を目標に、省エネルギー対策を充実させた建築の総称です。今回は、ZEB Ready(省エネ、通常同規模施設のエネルギー使用率50%削減)+防災をテーマに、非常電源用として、太陽光発電+蓄電設備を装備した設計となっています。太陽光発電は、通常時は、施設の日常電力に利用されることから、実際には、60%以上のエネルギー削減可能な設計となっています。施設は、特別養護老人ホーム。80名の方がお住いになります。9月1日に開所され、順次入所を開始します。施設が完成してから約1っカ月、運転状況を見てきましたが、確実に省エネルギー効果が発揮されていることを実感しました。環境省の補助金から設備費等に充当されています。国土交通省は、省エネ基準を益々強化すると発表しています。次世代エネルギー施設が完成したことになります。来年度から3年間は、環境省に実績報告の義務はありますが、実態は、私も知りたいところです。ZEB化は、公共施設の場合、将来義務化されると言われています。日本が世界に対し発表しているCO2削減率は、国際公約です。弊社は、秋田県の建築設計事務所で初めてZEBプランナーの資格を得ました。これは、設計する建築すべてをZEB化するのではなく、ZEBの知識を利用し、無駄なエネルギーを使わない建築設計に応用することが目的です。新たな建築を設計する時、ZEBプランナーの目線から、設計をチェックすることができます。弊社の新たな能力として大いに活用していきたいと考えています。 茂木聡

2020.8.3

老人福祉法には、実に様々な施設が定義されています。十数種類。専門家でもない限りその違いを説明することは難しいと思います。まして、一般の方が違いを理解することは、至難の業でしょう。通常、「老人施設」といわれる建築は、時代の変遷、法的根拠により、細分化されてきました。今回弊社が設計し、竣工した「特別養護老人ホーム共生の里」は、老人施設で言えば、一番重度な方々が入居され、介護保険制度のもと、手厚い保護、ケアを受けることができる施設です。昔は老人施設に入居というと、一種の差別感がありました。2000年、秋田県鷹巣町当時町長だった、岩川氏が入居させることが、ステイタスになる施設を作りたいとの考えから、故外山義京大教授と弊社が組んで作った「ケアタウンたかのす」は、新時代の幕開けになったと自負しています。全室個室が当たり前になった現在ですが、建築的にユニットケアの概念を構築したと考えています。当時考えたユニットは、6~7人が1ブランチで、それが3っつくっついて一つのユニットを構成する考え方でした。介護保険で1ユニット10人(最近では若干多くなってもOK)、夜間は2ユニットで一グループという規則が作られたせいで、ユニットケアが融通の利かないものに思われるようになってしまいました。実際、この規定は、運用上非常に難く、建築設計する立場からも、無理があるように思います、現在は介護度3以上が入居条件になったため、ますますむずかしく、意味のない空間造りになっている部分もあります。一時ユニットケアが良いと言われ、私自身も数十件設計してきましたが、多床室回帰の動きもあります。基本は、利用者の尊厳をいかに守るかであり、ユニット、個室論ではなく、利用者本位の空間を作ることが一番です。北欧では、かなり昔、脱施設が議論され、末期の方の最後の受け皿としてナーシングホームが位置付けられています。「クリッパンの老人たち」(外山義著)を読むと、克明に記されています。日本の福祉計画は、限界にきていると感じます。今一度、全体を通して、老人施設とは何か、考える時だと思います。 茂木聡