Column
コラム
今年は(公社)日本建築家協会建築家大会2019が青森県弘前市において、開催されます。 この大会は、建築家協会会員の全国大会で、今年は隣県の青森県弘前市が舞台となります。 「津軽からの再生」生きつづける近代建築とまちづくりと題して、様々な討議が行われます。 日本建築家協会は、日本の中で、世界で唯一認められている建築家団体です。 世界中から弘前に建築家が集まります。弘前市を舞台にしたのは、人口減少で悩み日本中の小都市を考え、 いかにしたら、街が、人が残り、文化が継承されていくかを問うのに適切と考えられたからです。 弘前市は、様々な近代建築が残され、活用されてきました。昨今のスクラップ&ビルドの発想とは違うまちづくりです。 町の観光ガイドには、近代建築が多数掲載されています。通常の観光ガイドとは全く違う造りです。 有名な建築家では、前川國男が挙げられます。フランスの世界的建築家ル・コルビジェの門下生で、 日本に帰って弘前で多数の建築を手掛けています。そして今でも大切に使われています。 秋田県でも似た環境の建築家が活躍しています。 白井晟一です。湯沢市を中心に多数の建築群をつくりました。 今回の大会では、白井晟一も取り上げられます。 世界の建築家が、日本の建築家が今、弘前を見ています。 2019年10月17,18,19日開催。 私も東北地方に在住する会員の一人として、今回の大会の副実行委員長を仰せつかりました。 大会が成功することを願っています。(茂木聡)
8月上旬、日本建築家協会東北支部秋田地域会主催の、県南古民家見学会が実施されました。 県南というと、湯沢市近郊の白井建築が想像されます。しかし、今回は秋田県の木造古民家に焦点を当てた見学会としました。 見学に行ったのは、羽後町の旧長谷山邸他。 長谷山低は豪邸です。木造一部3階建て。3階建ての部分は、蔵の上に載せた構造で、自重は独立柱、揺れは蔵へ渡した控え梁。構造、空間も見事ですが、デティールまでが、素晴らしいできばえ。釘隠しだけでも蝶、蟹等様々な嗜好が。一番驚いたのが、室内にある天井からぶら下がったガスランプ。屋外のガスランプは見る機会は多いのですが、これは室内。初めて見ました。衝撃的。しかもガスが天井内を配管されている。室内照明は、日本では行灯に代表されるように、床面近くの高さが基本です。天井に始めてランプがともされたのは江戸時代「吉原」で、客を引くため明かりを高くしたのが始まりといわれています。しかし、長谷山邸は、そんな知識を木っ端微塵に砕かれた気持に成りました。 現代建築は、コンピューターを駆使した建築で、人間が介入できるのはその一部。しかし、この民家は全て、人間の手仕事によってつくられている。そして、現代建築よりある意味モダン。建築は良く見て歩きますが、地元にもこんな素晴らしい建築があることを知らずにいた自分が、恥ずかしいと思いました。 茂木聡
老人福祉施設の新規作品を視察する機会があると、極力参加するようにしている。新築物件は、大方想定内の出来上がりと思う施設が多い。今年視察した特養の改修物件は、久々に感動した作品となっていた。栃木県にある築40年のRC平屋。典型的な特別養護老人ホーム。しかし、内部は大胆に改修が行われていた。外壁、屋根はそのままに、内部に新しく老人施設を造ったイメージ。コンクリートを解体した姿をそのままに、建築的にも良くできた作品。久々に、見ていて楽しくなった。運営も面白く、従来の老人施設の枠がないように思えた。新規に100床レベルの特養をつくると、土地代+建設費で30億円近くの費用がかかる。改修は土地代がかからず、運営は大変だが、合理的な考え方。これからの老人施設は、人口減少を考えると、なかなか建設は難しい。これからは改修も視野に各施設を検討して行きたいと考えさせられた。 茂木聡
私は現在、(公社)日本建築家協会東北支部で「2019全国大会in弘前」の副実行委員長をしています。その関係で、全国の会員との交流する機会があります。5月28.29日は北海道支部との交流及び視察を兼ねた時間をすごしました。若い頃2年間札幌に住んでいたこともあり、懐かしさと、寂しさをを思いました。まさに青春時代といえる年代でした。今回、北海道支部の方々と勉強会、視察等を重ね、改めて、東北との精神的距離の近さを実感しました。旭川で日本最大の製材会社、昭和木材にうかがい、原木の山、そして製材され、製品になるまでの工程を見学したり、旭川家具メーカーの木材が家具になるまでの工程見学等、札幌では、住宅を視察し、その設計の緻密さとおおらかさに感動したり、大いに刺激を受けた二日間でした。ハードスケジュールでしたが、私にとっては大変実り多い時間でした。今回の視察は、木が中心でしたが、秋田県でも同様、木を以下に採用するか考えさせられます。今回の視察で、木に対する原点回帰ができたように思います。考えすぎず、自然に採用されることが、一番良いことだと再認識しました。木の建築は日本風土に於いては自然のこと、しかし、私の学生時代は、木造はほとんど勉強していませんし、講義もなかったように思います。今一度、素直になって、木に親しみたいと思いました。 茂木聡
毎年、話題の施設や、新しい施設が完成すると、視察に訪れます。 今年も話題の施設を4箇所視察しました。各施設で共通しているのは、いかに地域との共有部分を持つかということでした。建築的に見ると、玄関らしい玄関がないこと。地域の方たちが自由に出入りできる場所があること、そして、運営も地域との共有部分を中心に設計されていることだと思いました。 考えてみると、昔、故外山先生(京都大学教授)が手がけられたグループホーム「ならのは」も、1階に喫茶室があり、地域の方々が普通にお茶を飲みに来ていました。約20年前の建築です。同グループホームは建物の両面が道路に面していて、人通りの多い側には、福祉施設の看板がなく、喫茶店の看板のみが置かれていました。地域の方は福祉施設とは思っていなかったようです。 今回視察した2施設は、独立したレストランを中心に、建築を配していました。レストランの食事はおいしく、土日は、満席という状況だそうです。お酒も飲めます。 衣食住といいますが、福祉施設では、食事は必ず必要なもの、これを地域に向けて開放することは、極自然なことと考えられました。高齢者は現在は増えています。しかし十数年後には多くの地域では、減少することが見込まれています。既に減少に転じている地域も多くあります。福祉施設を安定的に運営するためには、地域に根ざすことが重要になってきます。外山先生が20年前に提案されたことが、今、大きく花開いています。 茂木聡