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2022.2.16
人が死ぬということ

医療・福祉施設の設計を多く手掛けていると、物理的動線としての死は、絶えず考えます。しかし、実際の死は、ここに無限大の世界をもって存在しています。私は比較的早く、両親を亡くしました。その時は私の子供たちも小さく、日々の生活に追われ、また同居していなかったこともあり、死にたいする実感がつかめなかったと感じます。仕事仲間の友人のお母さまが亡くなったとの訃報を聞きました。九十歳後半。しかし、彼の追悼の文章を見て、思わず涙してしまいました。その背景を垣間見ることができたからです。彼の日々の対応が、その生まれ育った環境にあったのだと知りました。

昨今、新型コロナ感染症の蔓延もあり、新聞誌上では、今日は何人が亡くなったという記事を眺めています。しかし、その一つ一つに、人生があり、関わってきた人々が大勢いること。余りに無関心でいる自分に、恥ずかしさを覚えました。

建築設計の原点は、人が生きていく器を造ること。こと一番大切な部分が、昨今抜け落ちてしまったように感じます。  茂木聡