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 コラム

2016.10.4

日本を代表する建築家の初期の作品群がある秋田県湯沢市(現存7件)、市が保有する旧雄勝町庁舎の解体が、正式に決定しました。日本建築家協会、日本建築学会等の団体が、保存を市に進言し続けたことも、意味なく、解体が決定しました。解体後は駐車場にするとのこと。まったく意味不明です。湯沢市の対応が以後議論され続けることになるでしょう。無知なる故の決定です。同じく前川作品が8施設残っている弘前市は、市を挙げて保存改修を行っています。全国から見学者も多数訪問しています。この違いはどこから来るのでしょうか。前述のコラムで建築審査について触れましたが、審査会に前川氏設計の文化会館改修も提出されていました。作品として、市民の寄付や市の予算等で、建設当時に直す改修です。市民の問題、行政の問題と言うのは簡単ですが、考え方があまりにも違いすぎる。これが民度と言うものでしょうか。前川氏、白井氏、知名度は確かに前川氏に軍配が上がります。しかし、作品のオリジナリティー、デザインの習熟度は、白井氏に軍配を上げる人は、多いと思います。それほどの価値のある建築を、駐車場にするために解体するという発想は、どこから来るのか、同じ県民として恥ずかしく思います。  茂木 聡

2016.10.4

10月1日(土)せんだいメディアテークにおいて、日本建築学会東北支部主催、東北建築賞作品審査ヒアリングが行われました。私は審査員として2年目の参加です。今年は作品数が多く全部で33作品。すべてのヒアリングを行い、現地審査する作品を15点ほどに絞る作業が行われました。最終的には優秀作品8点程度に絞る、最初の審査です。昨年から見ると、作品数は増えたのですが、質的には、昨年度のほうが高かったように思います。朝9時から夕方5時までヒアリング、その後、審査員で、協議、長丁場でした。どうしても、自分の専門分野である医療福祉のジャンルになると、審査も厳しくなる傾向があります。審査員どうしの好みも関係してきます。ヒアリングのうまさ、資料の表現のうまさが大きく影響します。現地審査では、施主、設計者同席のもと、審査が行われます。審査員は最低2人以上。来年1月の最終審査会は、審査員どうしの激しい論戦となります。今年度はどのような結果になるか、楽しみです。  茂木 聡

2016.9.16

大学の長い夏休みは、学生のインターンシップが多く行われます。弊社にも、今年は3人の学生がきました。秋田県立大学大学院生、室蘭工業大学学部生、新潟大学学部生。最近は、大学では単位認定したり、大学院では、1級建築士の受験資格に影響したりと言う理由で、盛んになったようです。私が学生時代は、将来設計事務所に行きたいと思う学生は、ほとんどが設計事務所にアルバイトに行っていました。その変形版と考えればよいのでしょう。しかし、アルバイトの場合は長期間、継続することで、仕事の内容や大変さを学ぶことになりますが、一般に、インターンシップは2週間程度、受け入れ側も会社の仕事のおさらい程度となってしまいます。毎年受け入れて、考えますが、期間が短すぎる。制度自体が形骸化してしまっている等の問題点を感じます。しかし、受け入れ側に会社にとって、良いこともあります。20代前半の学生が出入りすることで、社員の刺激になること。インターンシップ制度自体は賛成ですが、もう少し現実に即したものになっていくことを願います。 茂木 聡  

2016.7.29

新屋のガラス工房は、設計段階から、渡辺佐文設計事務所の協力事務所として、活動してきました。7月に工事入札の結果、施工業者も決まり、着工いたしました。秋田美術工芸大学の支援の下、秋田県で一番の本格的ガラス工房となります。ショップやギャラリーも併設しています。完成予定は平成29年6月を予定、これから本格的工事が始まります。(茂木 聡)

2016.6.21

昨日(6月20日)、震災後何回か訪問してきた釜石市に約2年ぶりに訪れる機会があった。震災復興で土木工事はいたるところで行われ、順調に推移しているように見えた。しかし、建築は様々な大規模計画の話はあるが、遅々として進んでいない。これは、釜石市の事情が大きい。いわゆる、企業城下町であることに由来する。新日鉄の大型工場が多数林立し、市の経済を支えてきた。市民の多くは、新日鉄となんらかの関係にある。街の中心地の土地も新日鉄所有が多い。市は震災を期に大規模な再開発計画を模索して、新日鉄側も全面的に協力する意向を示している。しかし、現実問題として、最盛期9万人規模を誇った市民の数も、いまや3万人程度に激減している。また、震災を期に移転した人々(住民票は釜石市)も相当数にのぼると言われている。このような状況の中で、果たして大規模な再開発は必要なのだろうかと疑問を感じた。全国的にコンパクトシティーが求められている現在、地に足のついた計画が必要ではないかと思う。